同人というかアニメというかマンガというか
日本昔話の、あの得体の知れない怖さは何だろう。海外の童話にはない、闇が手招きをするような感覚と、何処かせつなく、相容れない怪異がそこにある。この作品は、仮想日本が舞台であり、生物や植物よりも、もっと命そのものに近いとされる「蟲」という架空の生き物が題材であり、主人公・ギンコはその蟲達を愛しもせず嫌いもせず、人との間を取り持つ不思議な存在、蟲師である。仮想日本とはいうが、時代や場所は敢えてぼかされており、ギンコは洋服を着ているが、他の人物は和服であったりして、だいたいどの時代がモデルか、というのもはっきりしない。しかし、おそらくは闇が闇であり、狐狸妖怪が存在し得た時代の日本のような場所なのだろう。今では俄かに信じ難い昔話が、現実として傍にある場所だ。蟲はそんな世界で、人に寄生したり、人に見えてはいけない物を見せたりする。しかし、不思議な事に、蟲は悪ではないのであって、勿論善でもない。ギンコはそれをよく知っており、人に影響を与えぬものはそのまま生かしておく。生命そのものの彼等も、人間と同じように生きようとしている事を解っているからだ。
そして、普通の生物よりも命の源流に近いものである蟲達は、決して人間にどうにか出来るものではない。その、言葉も話さず漂う、どうにか出来るものではない、光を帯びた不思議な大きな生き物を、アニメにおいてはとても美しく、時におぞましく描いている。近寄り難い感覚を与えると同時に、美しいと想わざるを得ない、幻想的なものとしてそこにあるのだ。
まるで大人の日本昔話のような作りをしていて、毎話毎話、異なる声明同士が生きている事を、淡々と語ってくれる。クオリティも非常に高く、美学が一貫している。生命は人間だけではない。そして、人はその生命に勝ち、征服する事など到底できないのだ、というスタンスが、足許を流れる光の川に見事に集積されている。ちなみにこの作品の同人誌はえぐいです。
魔人探偵脳噛ネウロ
推理ものかと想って読むと、裏切られる。ほんの少しのトリック解明的な要素はあるが、基本的な部分には、少年漫画らしいバトルが潜んでいる、奇妙な作品だ。主人公・ネウロは魔界から来た魔人であり、人の謎を解明する事によって発生するエネルギーを食事として摂取する生き物である。このネウロというキャラクターが実に絶妙で、推理ものもどきでありながら、どうしても次の展開を楽しみにしてしまう仕上がりになっているのである。
魔人である以上、ネウロは悪である。殺人等の大きな謎である程、彼の食欲が満たせるエネルギーを持っているので、度々事件に”下僕”(人間界での隠れ蓑)の女子高生・ヤコと、首を突っ込む。殺人というと理由があって、例えば「あの人が憎かったから殺した、でも愛してくれる××さんの為に警察に行きます。」みたいな哀しい殺人犯が出てくるものが殆どだが、この作品はそんなに甘くない。大体の殺人犯は悪に狂っていて、罪を暴かれたからといって、改心などしない。しかも、ネウロは謎以外に興味などなく、人間なんかどうなってもいいと心から想っている。罪を暴かれて逆上し、刃向ってくる殺人犯を、魔人の持つ力で廃人にしたりして、事件を解決(?)させてゆくのである。悪に見せかけて実はいい人では? と想いかけるが、何だか結局悪い事ばかりしている、所謂本物のダークヒーローなのだ。その、いい人じゃないところをすれすれで歩きながら、悪意と謎を生む犯罪者達と対峙してゆく様が、説教臭くなくて、実に気持ちがいい。
また、作者本人も認めているが、画力はそれ程高くない。けれども、それ以上に個性的な画面作り(アート的な歪んだような絵の表現)を多用しており、”悪”の迫力がすさまじい。いい意味で期待を何度でも裏切ってくれる作品である。