ぼくの地球を守って

 見た事もない風景が、何故か懐かしい。知らない場所に故郷を感じる。そんな奇妙かつ甘くせつない想いを、人は何故抱くのだろう。時にそれは本当の故郷より美しく感じたりする。この作品に於いて、その懐かしさは、人を恋しく想う心と相まって、壮絶な前世をも巻き込む事件に発展する。
 前世の記憶に於いて、地球に似ているが、地球よりもかなり進んだ文明を持つ星から月の基地に派遣され、地球を観察する任に就いていた七人がこの物語の核になるのだが、初めは主人公を除く皆が、現代に生きながらも、その前世の記憶に囚われている。それ程までに前世の記憶はせつなく哀しいものであり、前世との性別を違えて生まれ変わった者もいて、前世での恋心を引き摺ってこじらせたりもする。その恋心というものも、ただ単に好きだ嫌いだというものだけではない。月に派遣されている間に、自分達の生まれた星が、戦争によって滅びてしまうのである。いわば、七人はその七人以外の人類を全て失ってしまった生き残りである。それ故に、人を想う事の大切さを痛感した上での恋である。特に主人公の前世の恋人・紫苑は、自分を除く六人が全員病で亡くなり、たった一人でずっとずっと地球を見守っていたのだ。ずっと繰り返しモノローグで示される”ハヤクドコカヘカエリタイ”というキーワードが、とても哀しく響き渡る。
 しかしこの作品においては、そんな感傷にとどまる事が大切なのではなく、前世の記憶を超えて、地球にいる今の自分という存在として生きる事を、それぞれが選び取るところに感動がある。悲しい前世の出来事も、今の自分を見詰めて読み解けば、現世の自分達に残した大切なメッセージともなっているのだ。
 懐かしさはとても甘くて美しいものだが、想い出だけでは未来はやってこない。強い想いと愛おしいメッセージの込められた名作である。

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