G戦場ヘヴンズドア
漫画描きを題材とした漫画というものは、案外多い。この作品も漫画を描く人の漫画である。タイトルの「G」は漫画を描く為の道具、GペンのGである。しかし、主軸は漫画をどう描くか、ではなく、漫画を如何にして描くか、という大きな違いを有しているのだ。漫画の描き方的なハウトゥは殆どない。いい漫画、面白い漫画を描く精神・魂・人格についての話である。漫画が表現である以上、小手先の技術より何よりも、人格が作品を決めると言うのである。いくら絵が上手くても、中身が空っぽの人間に面白い漫画は決して描けない。辛辣な言葉が大量に綴られ、漫画を否定される事が人格を否定される事に繋がる。しかし、それ程までの想いをしてでも描くのが本当の漫画なのだ、と日本橋ヨヲコは訴える。漫画描きの漫画だが、何かに向かって戦っている人、一生懸命に何かに向かって進んでいる人ならば、必ず心を打たれる何かがある筈だ。
主人公・堺田町蔵は人気漫画家を父に持ちながら、幼少の頃に絵を馬鹿にされて以来漫画を嫌い、本来好きだった筈の漫画そのものから眼を背けていたが、絵が上手く、漫画の”中身”を求めていた長谷川鉄男と出逢い、漫画を合作し始める所から物語は始まる。二人は初め、互いに無い部分を互いに見出して共にいるのだが、やがて鉄男が自分の中には何もない事に気付き、町蔵は今まで見えていなかった自分の周りのやさしい人々の言葉の真意に気付いていく。人生の大切な時期に、漫画を通して二人は変わってゆく。ラストに向かって二人が羽化していくような感覚が、特に素晴らしい。哀しいとか、せつないとかいう意味ではない、本当によかった、という思いで涙が止まらなくなる。比類なき青春の物語であり、同時に成長と戦友の魂の漫画なのだ。