パプリカ

 兎に角、映像と、それに並走する平沢進の音楽が、不気味で美しくて快感で、胸が踊る。今敏と平沢進の映像美・超絶音楽のコンビは、過去の作品でもその素晴らしさは証明済みであるが、主要な舞台を夢の中に据えた本作では、遺憾なくその力は発揮されている。やがて夢が人の心を食らっていく、その様が混乱と混沌を生みながらも、終始緻密に描かれるのだ。
 冒頭で映像美と述べたが、所謂美麗であるという意味より、少し不気味でありながらも惹かれざるを得ないような場面構成となっている。永遠に抜け出せないような、誰もが体験した事のある悪夢というものを具現化しているのだ。夢は現実に照らすと、大体において奇妙な法則に従って展開していて、夢を視ている間は奇妙だとは想わないのだが、夢から醒めれば明らかにおかしい、という事がよくある。その、現実に照らせばおかしい、という感覚を失わせる力が、おそろしい程の説得力を持ってこちらに迫ってくる。主人公・パプリカ(千葉敦子)自体も、夢を視る人の中で様々に姿を変えてゆくのが面白い。現実世界ではサイコセラピストであり、夢の世界では探偵であるパプリカは、夢を視る人の理想の世界に即した姿にひらひらとその形を変える。キュートな雰囲気から大人っぽい色気をふりまく場面まで実に様々で、その様子を追うだけでも息をつく暇もない。彼女自身もやがて、”夢を犯す”犯罪者に呑まれていってしまうのだが、それでも、夢の世界を渡る、正にヒロインとしての魅力にあふれた女性である。姿をころころ変えても、彼女をパプリカと認識出来るのは、声優・林原めぐみの力によるところも大きい。様々な世界に即した声色を使い分けて、観る物を楽しませる。
 アニメには、アニメにしか出来ない映像の美しさを。全てのキャスト・スタッフが、正に総力を結集して、美しさを饒舌に語った名作である。

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