真野球ドラマ-外伝
坂本渉太は、近年稀に見る発想力の持ち主である。現代に於いて、全ての作品は何か既出の要素を組み合わせたものになり、如何に上手くそれを組み上げるかが焦点となる中、彼の映像作品は、根本的な着想が常軌を逸している。彼のキャリア的にも、映像作家になりたくてどこそこの美大や専門学校を出たという事もなく、たまたま友人であったバンドの楽曲のMVを制作した事で、一気に注目を浴びるに至った。映像の技術に関しては全て独学であり、絵は気持ち悪い下手さのまま、何故かぬるぬると動くアニメーションが病みつきになる作風である。
そんな彼の連載アニメなのだが、内容は無に等しい。元々は彼とその友人二人(アーティストであるが、それほど有名ではない、ほぼ一般人)と自発的に放送していたネットラジオの会話にアニメをあてたものであって、その会話のしょうもなさたるやすさまじいのだ。元々仲の良い二十代後半の男三人が寄って、勝手にX-JAPANのヒースの名前の由来を決めたり、架空のハンバーグ横丁なる場所に辿り着く為の道のりを説明したり、アンジェラ・アキの需要を掘り起こす為にロボット的な改造を試みたり等、誰も得しない事この上ないのだが、その誰も得しない会話に対し、現実的な突っ込みを入れる人間もいないので、そのまま会話がおかしな方向に直進してゆく。その無内容なくせにやけに面白い会話に乗るアニメが、また殊更に気持ち悪い。関節の付き方やデッサンがおかしいどころではない、かろうじて人間のようなものが三体寄って、手や口をもごもご動かすのである。背景もよく解らない森の中だったり、のび太の部屋と思しき場所で延々とくっちゃべっているのだ。何がどう面白いのか、と訊かれても、説明するのは野暮である。おそらく誰にも強制される事なく発生したネタを利用した作品故の自由さが、たまらないのだ。